コンポジット・チャートは二人の関係性そのものを表す西洋占星術の高度な相性診断技法です。作成方法から読み方、恋愛・結婚・友人関係での活用法まで、プロの占星術師が詳しく解説します。シナストリーとの違いや実践的な分析ポイントも紹介。
コンポジット・チャートとは何か
コンポジット・チャート(Composite Chart)は、西洋占星術における最も高度で精密な相性診断技法の一つです。この手法は、二人の出生図から作成される第三のホロスコープで、その関係性そのものを一つの独立した「存在」として捉える革新的なアプローチです。
従来の相性診断では、二人のホロスコープを重ね合わせて惑星同士の相互作用を見るシナストリーが一般的でした。しかし、コンポジット・チャートは全く異なる視点を提供します。それは「AさんとBさんの関係性」を、まるで一人の人物のように分析する手法なのです。
この技法の画期的な点は、関係性に固有の特質や運命、課題を明らかにできることです。例えば、個人としては穏やかな性格の二人が、関係性においては激しく情熱的な絆を持つことがあります。逆に、それぞれがエネルギッシュな人でも、二人の関係は静寂で内省的な性質を帯びることもあるのです。

コンポジット・チャートの歴史と理論背景
コンポジット・チャートの概念は、20世紀中期にアメリカの占星術師によって体系化されました。特にジョン・タウンリー(John Townley)の研究が大きな影響を与えています。彼は1973年に『The Composite Chart』を出版し、この技法の理論的基盤を確立しました。
理論の根底には、「関係性は独立した実体である」という哲学的な洞察があります。これは心理学における「システム理論」とも共鳴する考え方です。二人が出会うことで生まれる化学反応のような現象を、占星術的に捉えようとする試みなのです。
作成方法:中点理論の実践
コンポジット・チャートの作成は、中点(Midpoint)理論に基づいています。具体的な手順を見てみましょう。
基本的な計算方法
1. 太陽の中点を求める
- Aさんの太陽:牡羊座10度
- Bさんの太陽:双子座20度
- 中点:牡牛座15度
2. 月の中点を求める
- Aさんの月:蟹座5度
- Bさんの月:乙女座25度
- 中点:獅子座15度
3. すべての惑星で同様の計算を行う
特殊なケースへの対処
時として、二つの惑星が黄道上で正反対の位置にある場合があります。例えば、一方が牡羊座0度、もう一方が天秤座0度にある場合、中点は蟹座0度または山羊座0度となり得ます。このような場合は、より短い弧を選択するのが一般的です。
また、アセンダント(上昇宮)やMC(天頂)の中点も重要な要素として計算に含めます。これにより、関係性の社会的な顔や目標意識も読み取ることができます。

シナストリーとの違い
コンポジットとシナストリーの違いを理解することは、相性診断の精度を高める上で極めて重要です。
シナストリーの特徴
シナストリーは「AさんがBさんをどう感じるか」「BさんがAさんに与える影響」といった、相互作用に焦点を当てます。これは関係性の動的な側面を明らかにします。
例えば:
- Aさんの金星とBさんの火星がコンジャンクション:強い性的魅力
- Aさんの太陽とBさんの土星がスクエア:責任感の重圧
コンポジットの特徴
一方、コンポジットは「この関係性自体がどのような性質を持つか」を探ります。これは関係性の本質的な側面を表します。
例えば:
- コンポジットの金星が第7ハウス:調和的で美しい関係性
- コンポジットの冥王星が強調:変容をもたらす深い結びつき
惑星別解釈のポイント
太陽:関係性の中核
コンポジットの太陽は、その関係の基本的なアイデンティティを表します。太陽が位置する星座とハウスによって、二人がどのような関係性を築くかが決まります。
火の星座(牡羊座・獅子座・射手座):エネルギッシュで積極的な関係。共に冒険や挑戦を楽しむ。
地の星座(牡牛座・乙女座・山羊座):安定性と実用性を重視。現実的な目標に向かって協力する。
風の星座(双子座・天秤座・水瓶座):知的な交流と社交性。アイデアの共有を通じて絆を深める。
水の星座(蟹座・蠍座・魚座):感情的な深いつながり。直感的な理解と共感に基づく関係。
月:感情的な基盤
コンポジットの月は、関係性における感情的な安全基地を示します。二人が共に感じる安心感や、無意識レベルでの絆の質を表現します。
月が第4ハウスにある場合、家庭的で養育的な関係性を示唆します。第8ハウスなら、深い心理的な結びつきと秘密の共有を意味します。
金星:愛情と価値観
コンポジットの金星は、関係性における愛情表現の方法と共有する価値観を表します。この惑星の配置により、二人がどのような方法で愛情を育むかが分かります。
火星:行動力と情熱
コンポジットの火星は、関係性のエネルギーの方向性を示します。共通の目標に向かう推進力や、時には衝突のパターンも表現します。

ハウス分析の重要性
コンポジット・チャートにおけるハウス分析は、関係性がどの分野で特に活発になるかを示します。
第1ハウス:関係のアイデンティティ
第1ハウスに多くの惑星がある関係は、強い個性と独立性を持ちます。周囲からも印象的なカップルとして認識されやすいでしょう。
第7ハウス:パートナーシップの質
第7ハウスの強調は、理想的な協力関係を示唆します。結婚や長期的なパートナーシップに適した配置です。
第8ハウス:深い変容
第8ハウスの強調は、両者に深い心理的変容をもたらす関係を意味します。しばしば運命的な出会いと感じられます。
第11ハウス:友情と理想
第11ハウスが強調される関係は、友情を基盤とした結びつきです。共通の理想や未来への希望が関係を支えます。
アスペクト解釈の実践
コンポジット・チャート内のアスペクト(角度関係)は、関係性の動的な特質を表します。
調和的アスペクト
トライン(120度):自然な調和と理解。努力なしに良好な関係が維持される。
セクスタイル(60度):機会と可能性。適度な刺激により関係が成長する。
コンジャンクション(0度):強力な結合。良くも悪くも強い影響力を持つ。
困難なアスペクト
スクエア(90度):緊張と挑戦。乗り越えることで関係が強化される。
オポジション(180度):対立と補完。相違点を認め合うことで完全性を得る。
実際の分析事例
ケーススタディ1:恋愛関係
太郎さん(太陽:獅子座、月:双子座)と花子さん(太陽:天秤座、月:射手座)のコンポジット・チャートを分析してみましょう。
コンポジットの太陽は乙女座に位置し、第6ハウスにあります。これは実用的で奉仕的な関係性を示唆します。二人は日常的な協力を通じて絆を深めていくでしょう。
コンポジットの月は獅子座第5ハウスにあり、創造性と楽しみを共有する感情的な基盤を持ちます。遊び心と表現の喜びが関係を支えます。
金星は天秤座第7ハウスにあり、美と調和を重視するパートナーシップの理想を表現します。
ケーススタディ2:友人関係
学生時代からの親友である山田さんと田中さんの関係では、コンポジットの太陽が水瓶座第11ハウスに位置しています。これは理想と友愛に基づく関係性を示し、長期的な友情の継続を予測します。
木星が第3ハウスにあることで、知的な交流と学習の共有が関係を豊かにします。土星が第4ハウスにあることは、家族のような安定した基盤を提供します。
実践的な活用方法
恋愛・結婚における活用
コンポジット・チャートは、恋愛関係の将来性を判断する強力なツールです。特に以下の点に注目します:
1. 太陽と月の調和:基本的な相性の良さ
2. 金星と火星の配置:愛情と情熱のバランス
3. 第7ハウスの状態:結婚適性
4. 土星の役割:関係の安定性と継続性
ビジネスパートナーシップでの応用
商業的な協力関係においても、コンポジット分析は有効です:
1. 第10ハウス:社会的成功の可能性
2. 第2ハウス:金銭的な協力の質
3. 水星の配置:コミュニケーションの効率性
4. 火星と木星:成長と拡大への推進力
親子関係の理解
親子間のコンポジット・チャートは、教育方針や関係改善のヒントを提供します:
1. 第4ハウス:家庭環境の質
2. 第5ハウス:創造的な交流の可能性
3. 土星の教訓:成長のための課題
注意点と限界
コンポジット・チャートは強力な分析手法ですが、いくつかの注意点があります。
出生時間の精度
正確な出生時間がなければ、アセンダントやハウスの計算が困難になります。時間が不明な場合は、惑星のサインとアスペクトに重点を置いた分析になります。
一時的な関係への適用
コンポジット・チャートは、長期的で深い関係により適しています。一時的な出会いや表面的な関係では、その真価を発揮しにくい場合があります。
個人の成長要素
関係性は固定的なものではありません。個人の成長や環境の変化により、コンポジット・チャートの表れ方も変化することがあります。
まとめ:関係性の深い理解への道
コンポジット・チャートは、人間関係の本質を深く理解するための画期的なツールです。単なる相性診断を超えて、関係性そのものが持つ独特な個性や使命を明らかにします。
この手法を習得することで、恋愛、結婚、友情、家族関係、そしてビジネスパートナーシップまで、あらゆる人間関係をより深く理解できるようになります。占星術の学習者にとって、コンポジット・チャートの理解は、相性診断のスキルを次のレベルへと押し上げる重要なステップなのです。
関係性という目に見えないエネルギーの正体を、星々の配置を通して読み解く。それがコンポジット・チャートの持つ真の価値なのです。



